コルナゴ部長の阿蘇天空の旅

阿蘇くじゅう国立公園に位置する阿蘇内牧温泉からロードバイクで走るの魅力を紹介します。

夏目漱石 小説「二百十日」の舞台、内牧温泉

jjimg_299141_7780577_0.jpg
阿蘇を愛した夏目漱石は、明治32年内牧温泉に逗留します。
阿蘇の圧倒的な存在に自然の畏敬を感じた漱石は、その時の旅をもとに明治39年小説「二百十日」を書きました。
内容は圭さん碌さんという漱石たちを彷彿させる二人の主人公が、温泉街や宿での情景を語り阿蘇登山をするもので、滑稽に溢れる会話文中心の小説です。


















myou1IMG_5800.jpg
小説の冒頭は明行寺から始まります。

ぶらりと両手を垂(さ)げたまま、圭(けい)さんがどこからか帰って来る。
「どこへ行ったね」
「ちょっと、町を歩行(ある)いて来た」
「何か観(み)るものがあるかい」
「寺が一軒あった」
「それから」
「銀杏(いちょう)の樹(き)が一本、門前(もんぜん)にあった」
「それから」
「銀杏(いちょう)の樹から本堂まで、一丁半ばかり、石が敷き詰めてあった。非常に細長い寺だった」
「這入(はい)って見たかい」
「やめて来た」

                                 
                                   



















myou1IMG_5802.jpg
「銀杏の樹が門前にある非常に細長い寺」、それは先日紹介した「いまきん食堂」さんのすぐ近くにあるこの明行寺です。

夏目漱石が宿泊した部屋も残っています。
明治32年8月29日から5日かけ、熊本市の第五高等学校(熊本大学の前身)の英語教師だった漱石は同僚の山川慎次郎と阿蘇を旅します。
その時泊まったのが(旧 養神亭)ホテル山王閣、漱石が泊まった部屋は移築復元され漱石記念館として公開されています。




















myou1IMG_5810.jpg
さて、熊本市内からどうやって内牧温泉まで来たのでしょうか。
当時、豊肥本線はなく国道57号線もなく熊本から内牧まで馬車を利用しました。
漱石が訪れた当時はまだ宿が数軒あるだけだけの小さな温泉場で、小説に描かれているように田園静かな鍛冶屋の音、寺の鐘の音などきわめて日本的な音を聞き、阿蘇の里料理を肴にビール飲みながら碌さん、圭さんは世の文明批評を交わします。





















myousigaiIMG_5797.jpg
「姉さん、この人は肥ってるだろう」
「だいぶん肥えていなはります」
「肥えてるって、おれは、これで豆腐屋だもの」
「ホホホ」
「豆腐屋じゃおかしいかい」
「豆腐屋の癖に西郷隆盛のような顔をしているからおかしいんだよ。時にこう、精進料理じゃ、あした、御山へ登れそうもないな」
「また御馳走を食いたがる」
「食いたがるって、これじゃ営養不良になるばかりだ」
「なにこれほど御馳走があればたくさんだ。――湯葉に、椎茸に、芋に、豆腐、いろいろあるじゃないか」
「いろいろある事はあるがね。ある事は君の商売道具まであるんだが――困ったな。昨日は饂飩(うどん)ばかり食わせられる。きょうは湯葉に椎茸ばかりか。ああああ」
「君この芋を食って見たまえ。掘りたてですこぶる美味だ」
「すこぶる剛健な味がしやしないか――おい姉さん、肴は何もないのかい」
「あいにく何もござりまっせん」
「ござりまっせんは弱ったな。じゃ玉子があるだろう」
「玉子ならござりまっす」
「その玉子を半熟にして来てくれ」
「何に致します」
「半熟にするんだ」
「煮て参じますか」
「まあ煮るんだが、半分煮るんだ。半熟を知らないか」
「いいえ」
「知らない?」
「知りまっせん」
「どうも辟易(へきえい)だな」
「何でござりまっす」
「何でもいいから、玉子を持って御出(おいで)。それから、おい、ちょっと待った。君ビールを飲むか」
「飲んでもいい」と圭さんは泰然(たいぜん)たる返事をした。
「飲んでもいいか、それじゃ飲まなくってもいいんだ。――よすかね」
「よさなくっても好い。ともかくも少し飲もう」
「ともかくもか、ハハハ。君ほど、ともかくもの好きな男はないね。それで、あしたになると、ともかくも饂飩を食おうと云うんだろう。――姉さん、ビールもついでに持ってくるんだ。玉子とビールだ。分ったろうね」
「ビールはござりまっせん」
「ビールがない?――君ビールはないとさ。何だか日本の領地でないような気がする。情ない所だ」
「なければ、飲まなくっても、いいさ」と圭さんはまた泰然たる挨拶をする。
「ビールはござりませんばってん、恵比寿(エビス)ならござります」
「ハハハハいよいよ妙になって来た。おい君ビールでない恵比寿があるって云うんだが、その恵比寿でも飲んで見るかね」
「うん、飲んでもいい。――その恵比寿はやっぱり罎(びん)に這入(はい)ってるんだろうね、姉さん」と圭さんはこの時ようやく下女に話しかけた。
「ねえ」と下女は肥後訛りの返事をする。
「じゃ、ともかくもその栓を抜いてね。罎ごと、ここへ持っておいで」
「ねえ」



内牧温泉にお越しになる際、もしくはお帰りにこの本を読まれると、よりいっそう得難い旅になることでしょう。







日々是好日






スポンサーサイト
  1. 2012/02/22(水) 14:03:08|
  2. 観光情報
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
<<イワシフライで愉しむ自遊亭 | ホーム | 10日目の感想>>

コメント

コルナゴ部長

こんにちは、最後の写真は内牧温泉にある「あそビバ」という子供さん用の公園の滑り台だったかな、そんな高いところから撮った写真です。踏切は単に置いてあるだけで過去に鉄道が通っていたわけではありません。
  1. 2017/08/30(水) 12:48:35 |
  2. URL |
  3. もじゃおさん #-
  4. [ 編集 ]

う、美しい・・・ 阿蘇山

二百十日を検索していてこちらのブログへ辿りつきました。
昨年の地震は大変だったことと存じます。一日も早い復興をお祈りします。

私、40年前にいちど、九州横断旅行に連れて行ってもらって阿蘇山を訪れたことがあります。
この記事の最後の写真を拝見し、当時見た光景が鮮やかによみがえって来て心を奪われました。今度ぜひ撮影地を訪れてみたいと思っています。ざっくりで構わないので、撮影地情報を教えていただければ、と思います。踏切が見えているので、豊肥本線沿いかなとは思ったのですが。
九州方面に出張があればいいなぁと考えています。
  1. 2017/08/30(水) 10:48:52 |
  2. URL |
  3. もじゃお #-
  4. [ 編集 ]

DATAさん

はじめまして、DATAさん、
いまきん食堂で愉しまれたようですね
地元の若い人たちが頑張って「ここは阿蘇だな~」と感銘を受けた食事処です。
まだまだ来たばかりで知らないところばかりですが、少しづつ阿蘇らしいスポットを紹介したいと思います。
自転車の方は、雪だったり、雨だったり、極寒だったりと、合間にちょっとポタリングには厳しい気候です。
そこに阿蘇や峠があるのにもったない話ですが春の訪れとともに始動開始、ご期待でください!(笑)
  1. 2012/02/23(木) 09:21:03 |
  2. URL |
  3. コルナゴ部長 #-
  4. [ 編集 ]

はじめまして

 以前より、ブログ拝見させて頂いております。
 先日は、家族揃って紹介されていた
「いまきん食堂」にて舌鼓を打って参りました。
もちろん、赤牛丼、ちゃんぽん共おいしく
頂きました。
 今後もブログ楽しみにしております。
  1. 2012/02/22(水) 23:53:32 |
  2. URL |
  3. DATA #t50BOgd.
  4. [ 編集 ]

kenさん

立ち寄られたらよかったのに・・・・
内牧は標高500ありますから寒いです。
当然、夏は涼しく、クーラー不用の家も多いと聞きます。
やはりここは阿蘇です。
まだまだ宿についても地域についても情報収集の段階ですが気兼ねなくいつでも遊びに来てください。
居るか居ないかは宿の前の赤のアルファが目印です。
いまきん食堂のチャンポン、一人でも大丈夫、暖ったまりますよ。
  1. 2012/02/22(水) 17:34:59 |
  2. URL |
  3. コルナゴ部長 #-
  4. [ 編集 ]

こんにちは。

昨日は立野の坂を通って内牧へ。赤水あたりは少し雪が降っていました。
角萬前のファミマのベンチで阿蘇を眺めながらカップメンで温まり、部長のお宿前も通過しました。
お宿南側の川沿いを少し歩きましたが、なかなか風情があっていいですね!
帰りは車の少ないルートを新たに開拓できてうれしくなりました。また来週も内牧かな?^^
  1. 2012/02/22(水) 16:48:06 |
  2. URL |
  3. ken #-
  4. [ 編集 ]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://kikuchinokoto.blog88.fc2.com/tb.php/929-b445da94
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

Author:コルナゴ部長
コルナゴ部長のブログへようこそ!


自己紹介
阿蘇内牧温泉の温泉旅館から欧州の山岳コースを彷彿させる阿蘇サイクリングの愉しみ方を紹介しています。

最近の記事

ブログ内検索

リンク

このブログをリンクに追加する

月別アーカイブ

カテゴリー

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

カレンダー

09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

FC2カウンター

FC2カウンター

現在の閲覧者数: